ハヤテ小説

恋のはじまり
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「(・・・まさか。そんな事、あるわけないじゃないか・・・。百歩譲った所で、私がハヤ太君になんてあるはずがない)」
「・・・沙、理沙?」
「朝風さん?」

ふいに、ヒナギクとハヤテが自分を呼ぶ声が聞こえた。
どうやら先ほどから呼び続けていたらしい。全く気がつかなかった。

「・・・あ」
「どうしたの?さっきからずっと呼んでたのに、全く反応がないし」
「いや、ちょっと考え事をな」
「そう。何か悩みでもあるなら聞くけど?」
「大丈夫だ。心配するな」
「理沙がそう言うならいいけど・・・」

結構長い間考えていたようで、理沙に言われてもまだ心配している様子が抜けていないヒナギク。
そんなヒナギクを見ながら、理沙はヒナギクの入れた紅茶を飲む。
紅茶はすっかり冷め切っていた。

「・・・さすがヒナ。プロ級だな」
「もう冷めてるんじゃない?入れ直そうか?」
「ん。いい。これはこれでおいしい」

紅茶を飲み終えたあと、三人は生徒会の仕事に取り掛かる。
いつもならサボる理沙が仕事をしていたのは、ハヤテがいたからかもしれない。
無意識のうちに、理沙はハヤテと一緒にいたかったのかもしれない。





それから数週間、理沙はずっと悶々とし続けていた。
考えれば考えるほど、自分がハヤテを好きだという気持ちに気づいていった。
そして、自分の気持ちに気づいたからこそ、理沙は悩み続けていた。
ハヤテへの気持ちを捨てることは出来ない。だが、ヒナが悲しむ所も見たくない。
そんな恋と友情とに板ばさみにされ、理沙はこれ以上無いほどに苦しかった。






「どうしたの、理沙ちん。最近なんだかおかしいよ?」
「ほんと、いつもの理沙らしくないな」

数週間悶々としていたからか、最初からなのか理沙の様子がおかしい事に、泉と美希は気づいていた。
そのため、心底心配していた。

「いや、なんでもない。気のせいだ」
「でも・・・」
「やっぱり何かおかしい。何か隠してない?」
「・・・そ、そんな事ないさ」

美希の言葉に動揺する理沙。
挙動不審なこの様子では、うろたえているのがバレバレである。
それでも理沙は、必死に隠し続けようとした。

「その様子、絶対何か隠してるわね。バレバレよ。・・・何があった?」
「何か悩んでるんだったら、話だけでも聞くよ?」

だが、これ以上はもう隠しきれるわけがなかった。
このまま隠し続ける事を許されなかった。
言ってしまえば、何かが変わるかもしれない。それが怖くて、理沙は打ち明ける事をたじろいだ。
しかし、そんな理沙に泉と美希の視線が突き刺さる。
もう、黙っている事は不可能だった。

「ヒナには言うなよ。・・・私は、ハヤ太君が好きかもしれない」
「え・・・?理沙ちんがハヤ太君を?」
「ああ。最近、ヒナとハヤ太君を見てると、何だか怒りがこみ上げてくるんだ」
「それ、嫉妬じゃない?」
「という事は、理沙は本当にハヤ太君の事が好きなのか」
「そうみたいだ。だが、ヒナもハヤ太君が好きだろう?それなのに、私がハヤ太君を好きになったら、今の関係が壊れてしまいそうで怖いんだ。かと言って、この気持ちは変わらないし。どうすればいいのか、もう分からないんだ」

理沙は本当に辛そうな表情を見せる。
それほど理沙は辛く、苦しかった。どうする事も出来ず、悩んでいた。
そんな理沙を見て、美希と泉はどうしたものかと考え始めた。
だが、どう考えても解決策は思い浮かばない。
結果的に思いついたのは。

「ねぇ、ヒナちゃんに言ったら?今の関係は壊れちゃうかもしれないけど・・・お互い知ってた方がいいんじゃない?」
「それが出来れば問題ないんだ。けど、私はそれが出来ないから・・・」

その瞬間、教室の扉が開いた。
そして、入ってきたのは。

「・・・ヒナちゃん・・・」

理沙が今、最も会いたくない人物である、ヒナギクだった・・・。
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