ハヤテ小説

恋のはじまり
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「全く・・・何で私がこんな事をしなければならないんだ・・・」

白皇学院。
時計塔に行くために校舎内を移動している少女がいた。その少女ー朝風理沙は、その手に荷物を持っていた。生徒会で必要な道具である。
持ってくるように頼んだのは、言うまでもなくヒナギク。
泉や美希と三人で手分けして持っていくはずだったのだが、二人はサボり、理沙が一人で持っていく羽目になったのだ・

「私もサボりたい・・・」

生徒会の仕事をサボりたい理沙としては、面倒くさい事この上ない。
そんな事を考えていたがために、理沙はそこに階段があることに気がつかなかった。
そして、当然のごとく、階段を踏み外した。

「・・・え?うわぁぁぁぁ・・・!!」

思わず悲鳴を上げる。そして、直後に来るだろう痛みを思い、反射的に目を閉じる。
だが、いくら待っても予想していた痛みは感じなかった。それどころか、誰かに抱えられているような感じがして、目を開ける。
すると、そこにいたのは、よく見知った人物だった。







「大丈夫ですか、朝風さん」
「・・・ハヤ太君?」
「偶然通りかかった時に悲鳴を上げながら落ちてきたので驚きましたよ」

どうやら偶然にも近くにいたようだ。
そして、理沙が落ちてきたのを見て、間一髪助けたのだ。そのため、理沙は怪我をせずにすんだ。
ハヤテは理沙をゆっくりと降ろす。
理沙は気のせいか、顔が熱くなっている気がした。

「あ・・・ありがとう、ハヤ太君。助かったよ」
「今度から気をつけて下さいね?・・・これは、生徒会で使うものか何かですか?」
「ん?ああ。本当は泉たちと手分けして生徒会室に運ぶはずだったんだが、泉たちがサボったから私一人で今持って行ってる途中だ」

散らばった生徒会関係のものをまとめながら、理沙は面倒くさそうに答える。
ふいに、理沙の手が偶然ハヤテの手と重なった。隣を見ると、ハヤテが手伝ってくれていた。
理沙は思わず手を除ける。

「よければ手伝いますよ?これだけの量を一人では大変でしょうし」
「そう言うなら・・・手伝ってもらおうか」

そして、ハヤテと理沙は生徒会室へと向かった。
その間、理沙は終始心の中で葛藤していた、それが恋の始まりだとも知らずに・・・。







「遅かったわね。・・・って、ハヤテ君?」
「こんにちは、ヒナギクさん」

生徒会室。
その日もヒナギクは書類の山に囲まれていた。その姿は半分、書類の山で隠されている。
その様子を見て、ハヤテはヒナギクの大変さを改めて実感した。

「泉と美希はどうしたの?」
「サボった。ハヤ太君には、階段から落ちた所を助けてもらって、ついでに手伝ってもらったんだ」
「そうだったの。・・・っていうか、階段から落ちたって大丈夫なのっ?」
「今言ったじゃないか、ハヤ太君に助けてもらったんだ」
「そう。ありがと、ハヤテ君。二人とも、紅茶入れるわ。飲んで行って」

言いながらヒナギクは席を立ち、紅茶を準備する。その手つきは慣れたもの。
すぐに紅茶を入れ、ハヤテや理沙に差し出した。

「ありがとうございます・・・おいしいです。さすがヒナギクさんですね」
「そう?ありがと、ハヤテ君♪」

ハヤテとヒナギクが笑顔で話しているのを見た理沙は、胸が苦しくなるのを感じた。それが嫉妬だという事に、すぐに気づく事は出来なかった。
ただ、こうして笑いあっているハヤテとヒナギクを見ているのは何故だか辛いという事しか、分からなかった。それは、理沙が自分の気持ちを否定し続けていたからだ。
理沙は何となく自分の気持ちに気づいていた、心の奥底では。
だが、それを認めたくなくて、認めることが出来なくて、心の中でずっと葛藤し続けていた。
ヒナギクがハヤテを好きなことは知っていた。だからこそ、認めるわけにはいかなかった。
自分の気持ちを認めてしまえば、ヒナギクと今までどおり接する事は出来なくなってしまうと思ったから。
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